音楽療法士
音楽療法士の資格
現在、日本には音楽療法に関する国家資格制度はありません。 日本音楽療法学会による「音楽療法士」認定制度があります。この療法士認定を受けるには、療法士申請と療法士試験の二つの方法があります。
療法士申請は、一定の療法士基準(1,000ポイント)を超える実績がある場合に申し込む事ができ、療法士審査の結果「音楽療法士」として認定されます。
療法士試験は、学会の認定する学校の卒業生に受験資格が与えられ、それに合格すると「音楽療法士補」の認定が受けられ、その後3年の療法士実践経験を経て「音楽療法士」となるものです。 「音楽療法士」は資格ではありませんので、音楽療法の仕事に携わる場合に、療法士認定を受けていなくても特段問題はありません。 しかし、音楽療法という専門性が求められる領域では、療法士認定を得ることでその裏打ちがなされます。
療法士認定はあくまで、対象領域の専門性を有していること、いわば必要な条件の一つをクリヤーしていることを学会から認定されたにすぎません。もっと大切なのは人間を理解し適切に接するという療法士の資質だと思います。
音楽療法士の資質
音楽療法は、利用者(クライエント)自身の生きる力(エンパワーメント)を大切にし、生きる意欲を喚起します。そこではクライエントと援助者(ワーカー)との人間関係が基本になります。 したがって音楽療法士はカウンセラーと同じく、人間が理解できることが必須といえるでしょう。カウンセラーの第一人者は次のように述べています。
カール・ロジャース(米国の臨床心理学者) カウンセラーの第一の資質は、人間関係に対して敏感な人であろう。他人の反応に対して鈍感であったり、自分の言ったことが他人を愉快にさせるか不愉快にさせるかが分からなかったり、自分と他者間に存在する友情や敵愾心に気づかないようならカウンセラーには向いていないであろう。
河合隼雄(分析心理学者) カウンセラーといってもいろいろなタイプの人がいて、皆自分の長所を伸ばしてやっているので、そう簡単にこういう人はなれる、こういう人はなれないとは言えないが・・、 カウンセラーになりたいと思っている中で一番困る人は、自分に問題があるのに自分の問題はたなあげにして、人を救おうと思っている人です。自分は健康で自分はすばらしいから、誰か困っている人を助けてあげようという気持ちでは、カウンセリングはできません。
音楽療法士に求められる療法士スキル
音楽療法を実践するにあたっては、下記の3つの療法士スキル領域が求められます。
(1)音楽療法を実践する方法の知識とスキル
・音楽と療法との関わり
・病気に対する認識
・プログラムの立て方
・効果測定と評価について
音楽療法は目的を明確にし、それに応じた適切な方法を実施し、その結果を見直すことが必要です。その為には、体系立てられた取り組みが出来るスキルが求められます。 効果の確認にあたっては、対象者のできばえ(たとえばセッションのときに気分が乗っていたかどうか)のみを評価するのではなく、実践した音楽療法の適切性をはかり、療法士がそう評価した際の自らの心理状態を把握することも大切です。
(2)他人を理解するための知識とスキル
・傾聴する態度
・他人に寄り添う姿勢
・行動様式の理解
・時代背景の認識
他人とは、クライアントのみでなくご家族や他の療法士やワーカの方々を含めて理解することが大切です。効果的な音楽療法を実施するには、他の療法士や施設職員の方々との相互理解と協力が欠かせません。 また、他の音楽療法士や音楽療法の方法との良しあしの比較は慎み、お互いの良いところを認め、高めあうことが求められます。
(3)音楽を演奏するための知識とスキル
・楽器演奏スキル
・表現力、リズム感
・楽譜の読み書き
・多様な音楽ジャンルの知識
音楽のことをよく知っていること、そして音楽を演奏するスキルは必要ですが、演奏のプロである必要はありません。音楽を演奏することが目的ではなく、音楽を利用してケアをすることが目的なのです。 音楽のことをよく知った上で、療法となるために必要な工夫をして使うことが、大切な条件となります。また音楽のジャンルにこだわらず、音楽全般が好きでなくてはなりません。